講談「小夜衣草紙」を聴いて
沙界怪談実記の舞台をめぐる part 2
2023年10月14日開催

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今回のそぞろ歩きは、沙界怪談実記の中から順に
2話「北蛇谷の飯縄の法術」
14話「妖猫の起居よく人に似たり」
9話「槐樹の霊神童子を悩ます」
4話「高須町に鬼の腕ありし話」
を、めぐりました。
朝からの天気予報は雨……なんとか降らずにいてほしいところです。

堺の怪異話に引き込まれ…
怪異のあった場所をパネルで確認!

「沙界怪談実記」朗読は、序文・8〜13話。
少林寺町の八百屋の井戸から、石碑や地蔵が出てきたり、禅通寺の古木を切ると真っ赤な樹液が出てきたり、綾の町の商家では怪異が吉事を告げ、病気で亡くなった女房が陰火となって現れ、はたまた農人町の古井戸に陰火が出たり、宿院の川尻でも怪しきことがあったりと、鉄砲堂さんが集めた怖い話や不思議な話を、濱田碧さんのチェロとカリンバをバックに、なかともさんが語ります。

序文のイラストは、
なんばきび氏作

続いて、講談会の若手ホープ旭堂一海さんの怪異話。
「あんまり怪談持っていないんです」とおっしゃる一海さんですが、出身地の鳥取に伝わる怖い話を語ってくれました。


お楽しみ講談は、旭堂南湖さんの「小夜衣草紙より 蛤の吸い物」。
契りを交わした若旦那に捨てられ、己の喉をカミソリで切って絶命した花魁・小夜衣の亡霊が、婚礼の夜に起こす怪異の数々。蛤の吸い物が足りないと、探してみると……。

最後は、師匠・3代目旭堂南陵仕込みのハッピーエンドで、ほっと一息。
小夜衣の怨念に思わず身震いがするほどの熱演でした


講談が終わるころ、シトシトと雨が降ってきました。
そこで、案内人の陸奥賢さんと沙界怪談実記の現代語訳者・天羽孔明さんによるルート説明の後、そぞろ歩きのスタートです。
と、新在家濱のふとん太鼓が開口神社の前を通りました〜
布団の上の「青い結び」が特徴的ですね。

レインコートで雨でも大丈夫!

開口神社の北の鳥居から出て、古地図に書かれた南蛇谷を抜けると、大小路筋に出ます。大小路筋を隔てた北側が、北蛇谷だったと思われます。
「沙界怪談実記」2話に出てきた法術師は、ここにある商家に泊まっていたそうです。

古地図にある南蛇谷を抜けると…
大小路筋をはさんで北蛇谷?

次に訪ねたのは、菅原神社。
昔この辺りは、人家もまれで怪しいことが多かったそうです。今は住宅とマンションに囲まれています。
「沙界怪談実記」14話の蝋燭屋もこの付近にありました。飼っていた老猫が、二本足で歩きあんどんの油を舐める妖猫だったとか。


「沙界怪談実記」9話の禅通寺があったとされる禅通寺通。
その一本北の筋、長尾街道を通り、殿馬場中学校横を歩いて、飴買い幽霊伝説のある櫛笥寺を横目に、泉陽高校のグラウンドへ。
この辺りは堺奉行所があり、奉行の馬場=殿馬場と呼ばれていたことから、中学校名になったそうです。

殿馬場が、お奉行様の馬のための場所だったとは!
ここに江戸時代は牢屋敷がありました

さて、今は高速道路が上を走る土井川公園ですが、昔は川が流れていました。この川を渡る「極楽橋」は、死者を王子ケ飢(おうじがうえ)の墓地へ運ぶために渡る橋だったそうです。
「沙界怪談実記」4話に出てきた鬼の腕も、王子ケ飢へと運ばれました。

土井川公園へ移築復元された極楽橋

そのまま高速道路下を抜け東へと進み、首切地蔵へ。強盗に襲われ首を切られたと思いきや、傷がない。そこには首を切られたお地蔵様があったそうな…という伝承の首切り地蔵は王子ケ飢へと続く道にありますが、この先へは雨が本降りになり断念しました。


みなさん、雨の中そぞろ歩いてくださって、ありがとうございました。

(取材文:濱田さち 写真:町田安恵)