講談「吉備津の釜」を聴いて、
沙界怪談実記の舞台をめぐる part 1
2023年10月1日開催

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今回のそぞろ歩きは、沙界怪談実記の中から順に
13話「川尻の上下に夜々怪あり」
16話「土砂場の妖怪人を悩ます」
1話「絹屋町の妖怪」
7話「寺地町大道より古銭掘出す」
を、めぐりました。

今日は何話目をそぞろ歩くのかな?
「沙界怪談実記」パネルをチェック!

「沙界怪談実記」朗読は、序文・1〜7話。
鉄砲堂さんが集めた怖い話や不思議な話を、なかともさんが語ります。

絹屋町に現れた狐が、騒ぎを起こしたり、北蛇谷の商家に、管狐を使役する法術師が来たり、堺の運河に巨大な化け物が現れたり、鬼の腕を王子ケ飢の墓へと埋めたり、櫛屋町の染物屋で、夜中にたぬきの腹鼓が聞こえたり、頭がたいらで尻尾は猿、タヌキに似た獣を捕らえたり、寺地町の米屋の井戸から古銭が出てきたり……堺には不思議な話がいっぱいありますね。

臨場感たっぷりのなかともさんの語り
濱田碧さんのチェロ演奏が盛り上げます

続いて、旭堂南海さんによる講談「吉備津の釜」。
鳴らぬ釜に一抹の不安を覚えながらも嫁いだ磯良(いそら)。献身的に仕えるも、浮気性の正太郎は家に寄りつかない。遊女と別れるならばと磯良が用意した金を奪い、遊女と駆け落ちした正太郎に、磯良の呪いが……。
恐ろしい……情景が目に浮かぶような南海さんの講談に、はっと息を呑みます。


恐れを抱きつつ、雲行きの怪しい中、そぞろ歩きスタートです。
まずは開口神社から、影向石(ようごうせき)。
開口大神・塩土老翁神(しおつちおじのかみ)が、行基や空海と座ってお話した石といわれています。
凸凹して座りごごちは良くなさそうな気がしますね。

影向石

山之口筋交差点を南に渡り、住吉大社頓宮へ向かいます。
昔、宿院の堀川は、ふたをして暗渠(あんきょ)となってたそうです。
「沙界怪談実記」13話で出てくる妖怪たちは、この暗渠に住み着いていたのだと思われます。

この地下に流れていた川に妖怪が?!

宿院公園のあたりに昔は「なごしの丘」という小さな山があり、その山の入り口なので「山之口」というのが、名の由来だとか。
「なごしの丘」には、包丁鍛治が8軒ありました。
江戸時代、異形の顔を持つ出っ歯の職人がいたそうで、まったくモテない。有り余るエネルギーを込め、不眠不休で包丁を作ったところ、すばらしい包丁が完成!
それを出刃包丁と呼ぶようになったとか(笑)。
「出っ歯の包丁」 → 「出歯包丁」 → 「出刃包丁」 ですって。


さて、長谷寺と顕本寺(けんぽんじ)をめぐり、妙法寺へ.
ちなみに「沙界怪談実記」16話に出てくる土砂場の妖怪は、顕本寺の借家に住む由平に取り憑いた妖怪です。
場所と人物名まで記載しているところが、「沙界怪談実記」のすごいところですよね。

ここには、豊臣秀吉に御伽衆として仕えた人物・曽呂利新左衛門のお墓があります。
陸奥さんは「曽呂利物語」から「女の首がさまよっているところを、男が家まで追いかけた」話を紹介してくれました。

曽呂利新左衛門のお墓、なんとも可愛らしい


熱く焼けた鉄鍋を被せられてもお経を唱えたという伝説が有名な〈なべかむり日親聖人〉ゆかりの本成寺を通り、絹屋5丁目へ。
「沙界怪談実記」1話に出てくる河内屋宗兵衛という絹織屋があった土地で、現在の「堺市少林寺町東三丁」にあたります。

道路をはさんだ奥の路地に、妖狐が出現!

さて、いよいよ本日最後の怪異の聖地へ。
「沙界怪談実記」の7話「寺地町大道より古銭掘出す」とありますが、ここには紀州街道が通っています。
大坂夏の陣で町が焼けた後、徳川幕府によって整地され、堺は今のような碁盤目状の町割になりました。

チンチン電車(阪堺電車)が走ります

今古銭が出てきたら国宝級のお宝かも、と陸奥さん


雨が降るかと危ぶまれましたが、なんとか天気は保ってくれました。
これも妖怪のおかげ?
参加のみなさん、お疲れ様でした〜

(取材文:濱田さち 写真:町田安恵)